【小説】人情探偵富田林 スープカリー慕情 前編
オープニング;
振り返るけど〜♪夢はすりへる〜だけで〜♪ 摩天楼の彼方へ〜アイニードユ〜♪
俺の名前は富田林慎太郎。ここ東京、足立区北千住で探偵家業を営むものだ。
今日も愛しの銘柄、セブンスターを蒸しながら荒川の土手を見下ろしている。
そんなある日、客が現れた。
20代後半の女性で、名は邦子と言った。
依頼内容はこうだ。「蒸発した夫を探してもらいたい。」
フッ...
俺は数多の依頼を解決してきた。人探しなんて朝飯前さ....
そんな軽い気持ちで請け負った依頼が、振り返ってみるとこんな珍妙な事件になるとは思いもしれなかった....
依頼客、邦子はこう語った
邦子「探偵さん、お願いです。1週間前に蒸発した夫を探してもらいたいんです。」
俺は依頼人の身の上を聞いた。
邦子「私の夫は、札幌、すすきのにあるスープカリー店、ナマステグラッチェのシェフです。お店はありがたいことに毎日多くのお客様におこしいただいておりまして、すすきのではそれなりに認知されるお店になってます。私と夫は2年前結婚し、結婚生活も順調そのものでした。」
邦子「そんなおり、1週間前のある夜、突然、夫が姿を消してしまったのです。真面目な夫になにがあったのか?...私はいてもたってもいられず、こうして探偵さんにお願いすることに決心しました。」
富田林「警察に捜索願は出していますか?」
邦子「ええもちろん...ですが一向に見つかっておりません....」
富田林「そうですか....でもなんだって札幌くんだりから私んとこに?」
邦子「夫の育ちはここ北千住なんです。もしかしたら里帰りしているなんてこともあるかもと思いまして....」
富田林「そうですか、わかりました。引き受けましょう。旦那さんのことを今一度詳しく教えてください....」
俺は邦子から旦那のこと詳しく聞いた。
旦那の名前は竹枝健(ちくし けん)という。欧米風に読むとKEN CHIKUSHIだ。
東京足立区北千住で生まれ育ち、高校を卒業後、調理師の専門学校入学する。
その後、北千住のイタリア料理店でアルバイトを経たのち、北海道へ渡り札幌すすきのの有名店であったカレー料理店に住み込みで修行したそうだ。
そのカレー料理店のシェフが邦子の親父さんであり、弟子としてとても鍛えられたらしい。(どうやら弟子は健さんのほかもう一人いたようだ。)
その後、邦子の親父さんが亡くなり、
竹枝健さんが店を継いだそうだ。その後店も軌道に乗り邦子とも結婚したそうだ。
聞けば竹枝健さんはとても真面目な性格だそうで、女関係でだらしないところはなかったと。また借金も抱えていなかったそうだ。
ふむ...なるほど...
なんらかのトラブルに巻き込まれたか、
竹枝健さんの個人的な事情で行方をくらましたかのどちらかだな...
トラブルの調査は警察に任せるとして、俺は竹枝健さんのバックグランドでも漁ってみるか....
そう考え、とりかかり若い頃アルバイトしていた店をあたってみることにした。
ここか...
俺は竹枝健さんの過去のアルバイト先のイタリア料理店、「うまいやよ〜」
に聞き込みに入った。
店長は竹枝健さんのことを覚えている様子だった。
店長「ああ!竹枝健くんね!覚えてる覚えてる!彼!よく働いてくれてたよ!うちでコックやってもらいたかったけども!北海道に渡りたいっていうもんでね!残念だったんだけど!泣く泣く!見送らせてもらったよ!」
富田林「できるだけ最近のことで、彼について何か知りませんか?」
店長「そうだね!最近は全く連絡をとってないんだけども!ちょうど年賀状にね!5年前の!どうも海外に修行にいくとかいてあったよ!年賀状のやりとりはそれからなくなってさ!その後のことは全くわからないべさ!!」
富田林「そうですか。他に彼が親しくしていた人物とかは知りませんか?」
店長「なんかあったの?」
私は竹枝健さんとは古い友人で、この街に帰って来ているかも知れないからあってみたいので、探していると説明した。
店長「そうか人探しか!じゃあうちの店の廃棄物の掃除をしてくださっている、タツさんに聞いてみな!この街のことは一番くわしいからっよ!」
富田林「そのタツさんとはどこに?」
店長「わかんね!んだけども!大抵は金曜の夜にゴミの島公園にいけばあえっから!」
俺は店長に礼を言って店を後にした。今日はちょうど金曜日だそのタツさんという人物にも会ってみよう。そら夜まで時間があるな..
俺は背中に背負っていたダンボールを下ろして、荒川の土手で一眠りつくことにした.....
夜....
ゴミの島公園とはここか....
夜7時を回ったとこで、行ってみると確かに年配の男性が集まり宴会しているところが見えた。
富田林「ちょいとお邪魔するよ...タツさんていうのはどなただい?」
富田林「そうかあんたか、飲み相手を探していてね、俺も混ぜてくれないかい?」
タツ「そうか!うちはだれでもウェルカムだよささ座って...」
このタツという人物、どうも気のいいおじさんのようだ。
彼らはこの辺の浮浪者の集まりで、飲食店の掃除をすることで生計を立てているらしい。掃除した後にお代として食べ物をもらえるんだとか。
それを持ち寄ってパーティをしているらしい。
その中で一人、やたらと料理がうまい男がいて、みんな彼のことを褒めていた。
浮浪者A「やっぱケンがつくるメシはうまいだぎゃ!」
浮浪者B「ケンを仲間に入れてよかったぜよ!」
俺は連中の警戒心を解いたところでこうきりだした。
富田林「実は俺、人を探していてね...この写真の人なんだが、タツさん知らないかい?」
タツ「あぁ!こいつは竹枝健さんじゃねえか!目の前にいるよ!」
富田林「は?」
俺は目を疑った。なんとこの浮浪者に料理を振舞っていた男はよくみると、
竹枝健さんではないか....
後編へつづく。